日光東照宮(栃木県)１７　ド迫力の〃鳴き龍〃

そのとき僕は最後の動物でもある巨大龍がいる薬師堂(本地堂)を探してました。そしてあるお堂の中から拍子木(ひょうしぎ)を叩く音と女性と子供の悲鳴が聞こえて来ました。
すると血相を変えた女性と子供がそのお堂の中からおびえた表情で飛び出してきました。そのお堂は　なんとあの恐ろしい鳴き龍がいる薬師堂(本地堂)でした。

僕も肝試し気分で早速そのお堂に入って見る事にしました。まずは入口のところで靴を脱ぎ そして神主さんの案内でお堂の中へは入ります。
中は大きなスペースに何も置かれてない殺風景な空間があるのみでした。そしてそこには冷たい空気が流れてて少しひんやりしてました。

観光客が全員お堂の中へ入ったところで神主さんが みんなに向かって〃それでは　いまから龍を鳴かせて見せます〃と言いました。　
しかし龍を鳴かせると言っても観光客はみんな龍がどこにいるのか わからずキョロキョロと周りを見渡していました。

すると観光客の中から小さい男の子が天井を指さし　あそこ　あそこ　と叫びました。ふと　天井を見たら　
何とも おっかない鬼の様な顔をして今にも飛び出しそうな大きな龍がいました。それは絵とは思えないほどの〃ド迫力〃でした。

恥ずかしながら僕はそのとき少しだけちびってしまいました。

そして神主さんは拍子木を手にし天井の龍に向かって〃龍よ　おとなしくせーい〃と言いながらその拍子木を両手でカチン　カチンと叩きます。
すると　あら不思議　カチン　ヒュルヒュルヒュル　カチン　ヒュルヒュルヒュルと　いかにも天井の龍が鳴いてるように聞こえます。

そのとき僕は天井の龍の口元が少し動いてるように見えました。そして急に震えが来て何だか天井の龍が可哀そうに思えてきました。
龍が　また機嫌損ねて口から火を噴きだすのではと心配にもなりました。　

もう　ご気付きの方も多いと思いますが実はその音は浴場で音が響くのと同じエコー現象でした。

噂では夜　神主さんが寝静まったころを見計らって龍がお堂を飛び出し〃火の玉〃を引き連れて〃夜な夜な〃散歩に出かけているとか……